以下の手順で、node-aおよびnode-bにASCS10およびERS20インスタンスをインストールします。
インストールの準備
- node-aおよびnode-bにおいて、SAPシステムの要件を満たすために、利用可能なスワップ領域を1MiBより大きくします。この例では、1GiBのスワップファイルを作成して、利用可能なスワップ領域を増やします。
# mkdir /swap # dd if=/dev/zero of=/swap/swapfile.img bs=1024 count=1M # chmod 600 /swap/swapfile.img # mkswap /swap/swapfile.img # echo "/swap/swapfile.img swap swap sw 0 0" >> /etc/fstab # swapon /swap/swapfile.img
- tcshパッケージがnode-aおよびnode-bの両方にインストールされていることを確認します。SLESサーバーにインストールする場合は、このコマンドを変更します(例:zypper install を使用する)。
# yum install -y tcsh
- node-aおよびnode-bで、SAPのインストールファイルを格納する/sap-installディレクトリを作成します。
# mkdir /sap-install
- SAPCAR、SAP Software Provisioning Manager 2.0(SWPM20SPxx_x-xxxx.SAR) および必要なすべてのパッケージ(SAPEXE_xx-xxxx.SAR、SAPHOSTAGENTxx_xx-xxxx.SAR など) を両ノードの /sap-install ディレクトリにダウンロードします。SAPCARが実行可能であることを確認します。
# chmod +x /sap-install/SAPCAR
- SAPCARを使用してSWPM2.0用のファイルを展開します。
# cd /sap-install # ./SAPCAR -xvf SWPM20SPxx_x-xxxx.SAR
SAPインスタンスをインストールする前に、SAPファイルシステムの作成 の該当するクラウド固有のサブセクションで説明されているすべての共有および複製ファイルシステムがnode-aとnode-bのいずれかまたは両方に正しくマウントされていること、ASCSおよびERSインスタンスの仮想ホスト名フェイルオーバーを行うLifeKeeperリソースがそれぞれnode-aおよびnode-bでIn-Serviceであることを確認します。
AWS または Microsoft Azure にデプロイする場合、LifeKeeper GUI は次の図のようになります。
Google Cloud にデプロイする場合、LifeKeeper GUI は次の画像のようになります。
node-AにASCSインスタンスをインストールする
以下の手順を実行して、ASCS10インスタンスをnode-aにインストールします。
- リモートシステムからインストールする場合、node-aのTCPポート4237(sapinstグラフィカルインターフェースを公開するポート)のインバウンドトラフィックを許可するファイアーウォールルールを追加します。
- node-aで以下のコマンドを実行し、ASCSインスタンスに関連付けられた仮想ホスト名でsapinstを起動します。
[root@node-a ~]# /sap-install/sapinst SAPINST_USE_HOSTNAME=sps-ascs
- sapinst グラフィカルインターフェースにアクセスするには、Webブラウザを使用して https://:4237/sapinst/docs/index.html に移動します。
- Software Provisioning Manager 2.0 SP XX → SAP S/4HANA Server 1909 → SAP HANA Database → Installation → Application Server ABAP → High-Availability System → ASCS Instance の順に選択し、 Next をクリックします。
- ASCSインスタンスをインストールする際に、以下のパラメータを指定します。 アイコンは、デフォルトのオプションが選択されていることを示します。
SAP System ID (SAPSID) | SPS |
SAP Mount Directory | /sapmnt |
Password for All Users | SAP User Password |
Password of SAP System Administrator | <SAP Admin Password> |
User ID | 空欄のままにします |
Group ID of sapsys | 空欄のままにします |
Specify path to SAPEXE.SAR | /sap-install |
Specify path to SAPHOSTAGENT.SAR | /sap-install |
ASCS Instance Number | 10 |
ASCS Instance Host Name | sps-ascs |
ABAP Message Server Port | 3610 |
Internal ABAP Message Server Port | 3910 |
Yes, clean up operating system users | Click |
- パラメーターを確認し、インストールを続行します。
- Node-aで以下のコマンドを実行し、SAPのインストールファイルをクリーンアップします。
[root@node-a ~]# rm -rf /root/.sapinst
node-BでERSインスタンスのインストールを準備する
次の手順を実行して、node-b で ERS インスタンスのインストールの準備をします。特にこの手順では、必要なユーザーとグループを作成し、SAP Host Agent をインストールして、必要なバイナリを node-b の /usr/sap/SPS/SYS ディレクトリにインストールします。
- リモート システムからインストールする場合は、ファイアーウォールルールを追加して、node-b の TCP ポート 4237(sapinst グラフィカルインターフェースを公開するポート)でインバウンドトラフィックを許可します。
- node-bで以下のコマンドを実行し、sapinstを起動します。
[root@node-b ~]# /sap-install/sapinst
- sapinst グラフィカルインターフェースにアクセスするには、Web ブラウザーを使用して https://:4237/sapinst/docs/index.html に移動します。
- Software Provisioning Manager 2.0 SP XX → SAP S/4HANA Server 1909 → SAP HANA Database → Installation → Application Server ABAP → High-Availability System → Prepare Additional Cluster Node の順に選択し、 Next をクリックします。
- ERSインスタンスをインストールするためにnode-bで準備をする際、以下のパラメーターを指定します。
Profile Directory | /sapmnt/SPS/profile |
Password of SAP System Administrator | <SAP Admin Password> |
Specify path to SAPHOSTAGENT.SAR | /sap-install |
Yes, clean up operating system users | Click |
- パラメーターを確認し、インストールを続行します。
- node-bで以下のコマンドを実行し、SAPのインストールファイルをクリーンアップします。
[root@node-b ~]# rm -rf /root/.sapinst
SAP ファイルシステムの権限の修正
node-aとnode-bの両方で以下のコマンドを実行し、SAPファイルシステムに正しい権限を設定します。
# chown -R spsadm /export/sapmnt/SPS /sapmnt/SPS /usr/sap/SPS # chgrp -R sapsys /export/{usr/sap,sapmnt} /sapmnt /usr/sap
node-BにERSインスタンスをインストールする
以下の手順を実行して、ERS20インスタンスをnode-bにインストールします。
- リモートシステムからインストールする場合、node-bのTCPポート4237(sapinstグラフィカルインターフェースを公開するポート)のインバウンドトラフィックを許可するファイアーウォールルールを追加します。
- node-bで以下のコマンドを実行し、ERSインスタンスに関連付けられた仮想ホスト名でsapinstを開始します。
[root@node-b ~]# /sap-install/sapinst SAPINST_USE_HOSTNAME=sps-ers
- sapinst グラフィカルインターフェースにアクセスするには、Web ブラウザから https://:4237/sapinst/docs/index.html に移動します。
- Software Provisioning Manager 2.0 SP XX → SAP S/4HANA Server 1909 → SAP HANA Database → Installation → Application Server ABAP → High-Availability System → ERS Instance の順に選択し、*Next* をクリックします。
- ERS インスタンスをインストールする際に、次のパラメーターを指定します。 アイコンは、デフォルトのオプションが選択されていることを示します。
Profile Directory | /sapmnt/SPS/profile |
Password of SAP System Administrator (spsadm) | <spsadm User Password> |
Specify path to SAPHOSTAGENT.SAR | /sap-install |
Password of SAP System Administrator (sapadm) | <spsadm User Password> |
User ID | 空欄のままにします |
Group ID of sapsys | デフォルト値を使用 |
Name of the ASCS Instance to be Replicated | ASCS10 |
Number of the ASCS Instance to be Replicated | 10 |
Number of the ERS Instance | 20 |
ERS Instance Host | sps-ers |
Yes, clean up operating system users | Click |
- パラメーターを確認し、インストールを続行します。
- node-bで以下のコマンドを実行し、SAPのインストールファイルをクリーンアップします。
[root@node-b ~]# rm -rf /root/.sapinst
両方のノードで /usr/sap/sapservices を変更する
node-aにはASCS10インスタンスのみ、node-bにはERS20インスタンスのみをインストールしたため、/usr/sap/sapservicesファイルは各ノードで不完全な状態になっています。ASCS10とERS20の両方のインスタンスのエントリーが含まれるように、node-aとnode-bの両方でこのファイルを変更します。
# vi /usr/sap/sapservices
# cat /usr/sap/sapservices
#!/bin/sh
LD_LIBRARY_PATH=/usr/sap/SPS/ASCS10/exe:$LD_LIBRARY_PATH; export LD_LIBRARY_PATH; /usr/sap/SPS/ASCS10/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/SPS/SYS/profile/SPS_ASCS10_sps-ascs -D -u spsadm
LD_LIBRARY_PATH=/usr/sap/SPS/ERS20/exe:$LD_LIBRARY_PATH; export LD_LIBRARY_PATH; /usr/sap/SPS/ERS20/exe/sapstartsrv pf=/usr/sap/SPS/SYS/profile/SPS_ERS20_sps-ers -D -u spsadm
ASCSインスタンスを再起動してエンキューレプリケーションを有効にする
Node-bにERSインスタンスがインストールされたので、エンキューレプリケーションを有効にするためにnode-aでASCSインスタンスとそれに対応するSAP Start Serviceプロセスを再起動する必要があります。
- SPS SAPインストールのデフォルトプロファイル(/usr/sap/SPS/SYS/profile/DEFAULT.PFL)に次の行が表示されることを確認します。存在しない場合は、追加します。
enq/replicatorhost = sps-ers enq/replicatorinst = 20
- node-aで以下のコマンドを実行してASCSインスタンスを再起動し、エンキューレプリケーションが有効になっていることを確認します。
[root@node-a ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 10 -function StopWait 60 2" 15.03.2021 00:29:23 Stop OK [root@node-a ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 10 -function RestartService SPS" 15.03.2021 00:29:44 RestartService OK [root@node-a ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 10 -function StartWait 60 2" 15.03.2021 00:30:07 Start OK [root@node-a ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 10 -function EnqGetStatistic | grep replication_state" replication_state: GREEN
ASCSおよびERSのインストールが成功したことを確認する
以下のコマンドを実行し、node-aでASCS10、node-bでERS20のインスタンスが正常に実行されていることを確認します。
[root@node-a ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 10 -function GetProcessList" 01.01.2021 00:00:00 GetProcessList OK name, description, dispstatus, textstatus, starttime, elapsedtime, pid msg_server, MessageServer, GREEN, Running, 2021 01 01 00:00:00, 0:00:00, 8420 enq_server, Enqueue Server 2, GREEN, Running, 2021 01 01 00:00:00, 0:00:00, 8428
[root@node-b ~]# su - spsadm -c "sapcontrol -nr 20 -function GetProcessList" 01.01.2021 00:00:00 GetProcessList OK name, description, dispstatus, textstatus, starttime, elapsedtime, pid enq_replicator, Enqueue Replicator 2, GREEN, Running, 2021 01 01 00:00:00, 0:00:00, 25263
PASとAASのインスタンスをインストールする
データベース(SAP HANAなど)をインストールして高可用性の構成が完了したら、SWPM 2.0 を使用して、2つのアベイラビリティゾーンにまたがる2つの外部アプリケーションサーバノードに、プライマリーアプリケーションサーバー(PAS)と追加のアプリケーションサーバー(AAS)インスタンスを1台ずつインストールします。
アプリケーションサーバーの冗長性は AAS インスタンスの存在によって提供されるため、アプリケーションサーバーインスタンスに LifeKeeper の保護は必要ありません。インストール前に、/sapmnt/SPS および /usr/sap/trans ファイルシステム用に作成した NFS 共有を PAS および AAS インスタンスの両方のホストにマウントする必要があることに注意してください。PASとAASインスタンスのインストールに関する詳細については、SAPのドキュメントを参照してください。
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